2018-03-14
第4回京都府災害鍼灸マッサージコーディネーター研修オープン講座報告

災害時の見極め
-第4回京都府災害鍼灸マッサージコーディネーター研修オープン講座報告-

鍼灸地域支援ネット 理事 嶺 聡一郎
 2017年12月16日、京都社会福祉会館にて、

京都府災害鍼灸マッサージコーディネーター研修が行われました
(主催:(公社)京都府鍼灸マッサージ師会、(公社)京都府鍼灸師会)。
京都府の2大業界団体によるこの研修も第4回を迎え、今回は医療・福祉関係者に広く参加してもらえるオープン講座として開催されました。
テーマは「災害時の見極め」。
救急医療に携わる日本赤十字社の医師お二人を講師にお迎えし、豊富なご経験に裏打ちされた密度の濃い講座でした。

1.エコノミークラス症候群の見極め
避難生活時に起きる可能性が高くなる、
いわゆる「エコノミークラス症候群」=静脈血栓塞栓症について、岡本文雄先生(高槻赤十字病院 救急部・循環器科)がその病態、症状形成の機序、リスク因子と見逃しを避けるための
見極めのポイントを、質疑応答を大幅に取り入れながらお話いただきました。
肺静脈血栓症は主に下肢に生じる深部静脈血栓症を基盤とし、肺動脈での塞栓による肺血栓塞栓症に至った場合は治療設備を備える施設以外では治療手段はなく、それゆえ予防と早期発見が重要であること、症状が多彩で特異症状が少なく見極めが難しい場合でも、症状とリスク因子を踏まえて「疑うこと」が臨床上重要であることを、実例を元に実践的に伝わってくる講座でした。
避難者の約1割、別の統計では車中泊者の30%に深部静脈血栓症が生じるという現実もご紹介いただきましたが、これは、放置すれば死に至る疾患と我々が出会う確率とも言えます。
「初期にどれだけ疑えるか」の大切さを改めて知る機会ともなりました。

2.災害時の避難所評価
静脈血栓塞栓症の背景となるのは避難生活です。
多くの人が生活する避難所環境を知ることは、リスク因子の把握と疾病予防のために必須となります。
勝見敦先生(武蔵野赤十字病院 救急部長)は、これまでの長きに渡る災害医療の経験に基づいて、避難所評価のポイントと方法を、実際に使用される避難所アセスメントシートを用いたワークショップ形式も取り入れながら、一線で災害支援に携わってこられた熱を持って伝えてくださいました。
インフラや給排水や食事以外にも、避難者の健康維持に必要な事項は多岐に渡ること、実際にその情報を集約して問題点をディスカッションすることの難しさと必要性の両方を、ワークショップパートを通じて体感できたことは貴重な体験でした。
それと共に、「どのような職種であってもその専門性を発揮するためには、まず地域の信頼を得なくてはいけない」、「信頼関係を築くためには避難所運営会議などにも積極的に参加すること」、「専門性にこだわらず、出来ることはなんでもやる」といった、ご自身のご経験に根差した勝見先生のアドバイスは、とかく自分の専門性だけが前面に出がちな鍼灸マッサージ師にとっては、箴言ではないかと思います。

2017年最後の研修講座。穏やかな新年を願いながらも、災害時に何を行うのかに思いを致す師走の午後となりました。

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